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不貞の慰謝料請求はもう古い?「時代遅れ」と言われる理由と日本の法的根拠を徹底解説

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パートナーの不貞行為が発覚し、慰謝料を請求しようか悩んでいるあなた。あるいは、不貞の慰謝料を請求されて、「そんな制度は時代遅れではないか」と疑問に感じているあなたへ。近年、価値観の多様化などを背景に「不貞の慰謝料は時代遅れ」という声を聞く機会が増えました。本記事では、なぜそのように言われるのか、そして現在の日本では法的にどう扱われているのか、最新の判例も交えながら、分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、あなたの抱える疑問や不安がきっと解消されるはずです。

電話占いウィル公式ページより引用
目次

なぜ不貞慰謝料は「時代遅れ」と言われるのか?

なぜ不貞慰謝料は「時代遅れ」と言われるのか?

「不貞行為は許せないけれど、慰謝料を請求するのは何だか古い気がする…」そう感じる方は少なくありません。なぜ、不貞慰謝料が「時代遅れ」だと言われることがあるのでしょうか。その背景には、いくつかの社会的な変化や考え方が影響しています。
本章では、まずその理由について掘り下げていきましょう。

  • 海外では不貞相手への慰謝料請求が認められない国が多い
  • 個人の恋愛や性に関する価値観の多様化
  • 「夫婦間の問題」として捉える意識の変化

海外では不貞相手への慰謝料請求が認められない国が多い

「不貞慰謝料は時代遅れ」と言われる大きな理由の一つに、海外の法制度との違いがあります。実は、不貞行為をした配偶者の相手方に対して、慰謝料請求を認めている国は世界的に見ても少数派です。 例えば、アメリカの多くの州やヨーロッパの国々では、不貞相手への慰謝料請求は原則として認められていません。

その背景には、「不貞行為はあくまで夫婦間の問題であり、責任を負うべきは第一に不貞をした配偶者である」という考え方や、「個人のプライバシーに関わる問題を法廷で争うべきではない」という価値観があります。 このような海外の状況を知ると、「なぜ日本だけ?」と疑問に感じ、日本の制度が時代遅れに思えてしまうのかもしれません。

個人の恋愛や性に関する価値観の多様化

現代社会では、結婚や恋愛、家族のあり方に対する価値観が大きく変化しています。従来の「一夫一婦制」を絶対的なものと捉えるのではなく、より柔軟なパートナーシップを認める考え方も広がりつつあります。

このような中で、不貞行為を「個人の自由な恋愛」の範疇と捉え、法的に金銭を請求することに違和感を覚える人が増えているのも事実です。 特に若い世代を中心に、当事者間の合意があれば様々な関係性が許容されるべきだという風潮もあり、画一的な道徳観を前提とした慰謝料制度に疑問が投げかけられています。

「夫婦間の問題」として捉える意識の変化

かつては、不貞行為は「家」や「社会」に対する裏切りと見なされる側面が強くありました。しかし、現代ではより「個人」に焦点が当てられ、夫婦関係の問題は、第三者が介入するのではなく、当事者である夫婦が話し合って解決すべきという考え方が主流になっています。

メディアで有名人の不倫が報じられる際も、批判的な意見だけでなく「他人の家庭のことに口を出すべきではない」といった声も多く見られます。 このような意識の変化が、「不貞行為の責任を不倫相手にまで金銭で追及するのは行き過ぎではないか」という「時代遅れ」論につながっていると考えられます。

それでも日本で不貞慰謝料が認められる法的根拠

それでも日本で不貞慰謝料が認められる法的根拠

海外の状況や価値観の変化から「時代遅れ」との声も聞かれる不貞慰謝料ですが、現在の日本では、法律上明確に認められている権利です。では、なぜ日本では慰謝料の請求が認められるのでしょうか。その法的な根拠を理解することが、この問題を考える上で非常に重要です。
本章では、日本の法律が不貞慰謝料をどのように位置づけているのかを解説します。

  • 法的根拠は民法709条の「不法行為」
  • 保護されるべきは「婚姻共同生活の平和」という利益
  • 不貞行為は「共同不法行為」にあたる

法的根拠は民法709条の「不法行為」

不貞慰謝料の請求が認められる直接的な法的根拠は、民法第709条に定められている「不法行為による損害賠償請求」です。


民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

簡単に言うと、「わざと(故意)または不注意(過失)で、他人の大切な権利や利益を傷つけた人は、その損害を金銭で償わなければならない」というルールです。交通事故でケガをさせたら治療費を払うのと同じように、不貞行為によって精神的な苦痛という損害を与えた場合に、慰謝料という形でお金を支払う義務が生じるのです。

保護されるべきは「婚姻共同生活の平和」という利益

では、不貞行為は「他人のどのような権利や利益」を侵害するのでしょうか。判例では、それは「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」であるとされています。

夫婦は、お互いに貞操を守る義務(貞操義務)を負っています。 配偶者以外の人物と肉体関係を持つ不貞行為は、この貞操義務に違反し、夫婦の信頼関係を根底から覆し、平穏で安定した結婚生活という、法律上保護されるべき大切な利益を侵害する行為だと考えられています。 だからこそ、その精神的苦痛に対して慰謝料が認められるのです。

不貞行為は「共同不法行為」にあたる

不貞行為は、当然ながら一人ではできません。あなたの配偶者と、その不倫相手の二人がいて初めて成立します。そのため、法律上、不貞行為は「共同不法行為」(民法719条)と位置づけられます。

これは、「二人が共同で、あなたの平穏な結婚生活を侵害した」と考えるためです。その結果、被害者であるあなたは、不貞行為を行った配偶者と不倫相手の双方に対して、慰謝料を請求する権利を持ちます。 どちらか一方にだけ請求することも、両方に請求することも可能です。ただし、慰謝料の二重取りはできないため、例えば慰謝料の総額が200万円と算定された場合、両方から200万円ずつ、合計400万円を受け取ることはできません。

【重要】知っておくべき不貞慰謝料の最新動向(判例から解説)

【重要】知っておくべき不貞慰謝料の最新動向(判例から解説)

「不貞慰謝料は時代遅れ」という議論に、近年の最高裁判所の判例が影響を与えている側面があります。特に、平成31年2月19日に示された最高裁判決は、不貞相手に対する慰謝料請求の実務に大きな影響を与えました。この最新の司法の判断を知ることは、今後の動向を理解する上で欠かせません。
本章では、この重要な判例が何を意味するのかを分かりやすく解説します。

  • 平成31年最高裁判決のポイント
  • 不貞相手への「離婚慰謝料」は原則認められなくなった
  • 「不貞行為そのもの」への慰謝料は引き続き請求可能

平成31年最高裁判決のポイント

この裁判で争点となったのは、「不貞行為が原因で離婚に至った場合、その離婚によって生じた精神的苦痛に対する慰謝料(いわゆる離婚慰謝料)を、不貞相手に請求できるか」という点でした。

これまで、下級審の裁判では判断が分かれることがありましたが、最高裁判所は、この問題に対して初めて統一的な見解を示しました。この判決は、不貞慰謝料の考え方を整理する上で、非常に重要なものと位置づけられています。

不貞相手への「離婚慰謝料」は原則認められなくなった

最高裁判所は、「不貞相手は、不貞行為が原因で夫婦が離婚したことに対する慰謝料の責任までは、原則として負わない」と判断しました。

その理由として、夫婦が離婚するかどうかは、最終的にその夫婦自身の意思で決めるべき事柄であり、不貞相手が直接的に関与するものではない、という考え方が根底にあります。つまり、「不倫されたから離婚する」という決定は、あくまで夫婦の問題であると捉えられているのです。

ただし、例外として、不貞相手が「夫婦を離婚させることを意図して、婚姻関係に不当な干渉をした」などの特段の事情がある場合には、離婚慰謝料の請求も認められる余地を残しています。 例えば、積極的に離婚をそそのかしたり、嫌がらせをしたりするような悪質なケースがこれにあたります。

「不貞行為そのもの」への慰謝料は引き続き請求可能

この判決を聞いて、「もう不倫相手には慰謝料を請求できなくなったのか」と誤解される方がいますが、それは間違いです。最高裁判決が制限したのは、あくまで「離婚したこと」に対する慰謝料です。

「不貞行為そのものによって受けた精神的苦痛」に対する慰謝料は、この判決後も引き続き不貞相手に請求することが可能です。 前の章で解説した「婚姻共同生活の平和」を侵害されたことに対する損害賠償請求権がなくなったわけではありません。

したがって、「不貞慰謝料は時代遅れ」という風潮にこの判決が影響している可能性はありますが、不貞行為に対する慰謝料請求権そのものが否定されたわけではないという点を、正確に理解しておくことが重要です。

あなたの場合はどう?不貞慰謝料を請求できる3つの条件

あなたの場合はどう?不貞慰謝料を請求できる3つの条件

「時代遅れ」と言われようと、法律上、慰謝料請求権が認められていることはご理解いただけたかと思います。しかし、実際に慰謝料を請求するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。感情的に「裏切られたから」という理由だけでは、法的に請求が認められるとは限りません。
本章では、あなたが慰謝料を請求できるかどうかを判断するための、3つの重要な条件について具体的に見ていきましょう。

  • 条件1: 不貞行為(肉体関係)があったこと
  • 条件2: 相手に故意・過失があったこと
  • 条件3: 不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなかったこと

条件1: 不貞行為(肉体関係)があったこと

まず最も重要なのが、「不貞行為」の事実です。裁判上で不貞行為と認められるのは、原則として配偶者以外の異性と肉体関係(性交渉または性交類似行為)を持つことです。

二人きりで食事やデートを繰り返す、手をつなぐ、キスをするといった行為だけでは、原則として不貞行為には該当しません。 そのため、慰謝料を請求するには、ラブホテルに出入りする写真や動画、肉体関係があったことを示すメッセージのやり取りなど、客観的な証拠が極めて重要になります。

条件2: 相手に故意・過失があったこと

次に、不倫相手に「故意」または「過失」があったことが必要です。

  • 故意:あなたの配偶者が既婚者であると知っていたにもかかわらず、肉体関係を持った場合。
  • 過失:既婚者であるとは知らなかったが、少し注意すれば気づけたはずなのに、不注意で気づかずに肉体関係を持った場合。

例えば、不倫相手が「独身だと嘘をつかれていた」と主張し、それを信じることに無理がない状況だったと判断されれば、故意も過失もなかったとして慰謝料の請求が認められない可能性があります。 しかし、同じ職場である、指輪をしていた、家族の話をしていたなど、既婚者だと気づく機会があったにもかかわらず関係を持った場合は、「過失あり」と判断されることが多いでしょう。

条件3: 不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなかったこと

不貞慰謝料は、「平穏な婚姻生活」という利益が侵害されたことに対する賠償です。そのため、不貞行為が始まる前から、すでに夫婦関係が修復不可能なほど冷え切っており、実質的に破綻していたと認められる場合には、慰謝料請求が認められません。

「婚姻関係の破綻」は、例えば、長期間にわたって別居している、離婚調停中である、家庭内でも全く会話がなく食事も別々といった具体的な状況から総合的に判断されます。 ただし、単なる夫婦喧嘩や一時的な不仲程度では、破綻しているとは認められないケースがほとんどです。

不貞慰謝料の相場はいくら?状況別の金額目安

不貞慰謝料の相場はいくら?状況別の金額目安

慰謝料を請求する側も、される側も、最も気になるのは「結局、いくらぐらいになるのか」という金額の問題でしょう。不貞慰謝料には法律で定められた明確な計算式はありませんが、これまでの裁判例の積み重ねから、ある程度の相場が存在します。
本章では、状況に応じた慰謝料の相場と、金額が変動する要因について解説します。

  • 離婚した場合の慰謝料相場
  • 離婚しない場合の慰謝料相場
  • 慰謝料の金額を左右する様々な要因

離婚した場合の慰謝料相場

不貞行為が直接的な原因となって、最終的に夫婦が離婚に至った場合、精神的苦痛はより大きいと判断され、慰謝料の相場は高くなる傾向にあります。

一般的に、その金額は100万円~300万円程度が目安とされています。 離婚に至らなくても、不貞が原因で別居を開始し、夫婦関係が修復不可能な状態になった場合も、これに近い金額が認められることがあります。

離婚しない場合の慰謝料相場

不貞行為はあったものの、夫婦関係を再構築することを選び、離婚しない場合、慰謝料の相場は離婚した場合よりも低くなります。

その場合の金額は、50万円~150万円程度が目安となります。 もちろん、これはあくまで相場であり、個別の事情によってはこれより高額になるケースも、低額になるケースもあります。

慰謝料の金額を左右する様々な要因

上記の相場はあくまで目安であり、最終的な金額は様々な事情を考慮して決められます。一般的に、以下のような事情があると慰謝料は増額または減額される可能性があります。

【慰謝料が増額される要因】

  • 婚姻期間が長い
  • 不貞行為の期間が長く、回数が多い
  • 不貞相手が妊娠・出産した
  • 不貞行為の発覚後も、反省の色が見られない
  • 夫婦に未成年の子どもがいる
  • 不貞が原因で、被害者側がうつ病などの精神疾患を患った

【慰謝料が減額される要因】

  • 婚姻期間が短い
  • 不貞行為の期間が短く、回数が少ない(1回きりなど)
  • 不貞行為以前から、夫婦関係が悪化していた
  • 不貞相手が真摯に謝罪し、反省している
  • 請求された側に支払い能力がない
  • 不貞行為について、配偶者から主導的・積極的に誘った

よくある質問

よくある質問

肉体関係がなくても慰謝料は請求できますか?

原則として、肉体関係(性交渉や性交類似行為)がない場合、不貞行為とは認められず、慰謝料の請求は難しいです。 しかし、キスや抱擁を繰り返す、頻繁に密会を重ねるなど、その行為が社会通念上許される範囲を著しく超え、夫婦の婚姻共同生活の平和を害するものであると評価される場合には、例外的に慰謝料が認められる可能性もゼロではありません。 ただし、その場合でも認められる金額は数十万円程度と、肉体関係がある場合に比べて低額になる傾向があります。

不貞慰謝料に時効はありますか?

はい、あります。不貞慰謝料を請求する権利は、永久に認められるわけではありません。時効は以下の2つのうち、いずれか早い方が到来した時点で成立します。

  1. 不貞の事実と不倫相手を知った時から3年
  2. 不貞行為があった時から20年

例えば、10年前に不倫があったとしても、その事実を最近知ったのであれば、知った時から3年間は請求が可能です。しかし、不倫の事実を知ってから3年が経過してしまうと、たとえ20年経っていなくても時効となり、相手が時効を主張すれば慰謝料を請求することはできなくなりますので注意が必要です。

慰謝料は誰に請求できますか?

不貞行為は、あなたの配偶者とその不倫相手による「共同不法行為」ですので、慰謝料は配偶者のみ、不倫相手のみ、またはその両方に対して請求することが可能です。 誰に請求するかは、あなたが自由に決めることができます。例えば、離婚はせずに夫婦関係を再構築したいけれど、不倫相手には責任を取ってほしいという場合には、不倫相手にだけ請求することもできます。

請求された側ですが、「時代遅れ」を理由に支払いを拒否できますか?

残念ながら、「時代遅れだから」という理由だけで法的な支払い義務を免れることはできません。 日本の法律では、前述のとおり不貞慰謝料請求権が認められているため、請求の条件を満たしている限り、支払い義務が発生します。請求を無視し続けると、最終的に裁判を起こされ、給与や財産を差し押さえられる可能性もあります。 ただし、請求されている金額が相場よりも著しく高額である場合や、減額されるべき事情がある場合には、弁護士に相談するなどして、適正な金額への減額交渉を行うことは可能です。

まとめ

まとめ
  • 不貞慰謝料が「時代遅れ」と言われる背景には、海外との制度の違いや価値観の変化がある。
  • 海外では不貞相手への慰謝料請求を認めない国が多いのが実情である。
  • 日本では民法709条の「不法行為」を根拠に慰謝料請求が認められている。
  • 保護されるべき利益は「婚姻共同生活の平和」という考え方に基づいている。
  • 平成31年の最高裁判決で、不貞相手への「離婚慰謝料」は原則請求できなくなった。
  • ただし、「不貞行為そのもの」への慰謝料請求は引き続き可能である。
  • 慰謝料請求には「肉体関係」「相手の故意・過失」「婚姻関係が破綻していない」ことが条件となる。
  • 慰謝料の相場は、離婚する場合で100万~300万円、しない場合で50万~150万円が目安。
  • 婚姻期間の長さや不貞の態様など、様々な事情によって金額は増減する。
  • 慰謝料請求権には「知ってから3年」「行為から20年」という時効がある。
  • 慰謝料は配偶者、不倫相手、その両方に請求することが可能である。
  • 「時代遅れ」という理由だけで支払い義務を拒否することは法的にできない。
  • 請求された側は、金額が不当に高額な場合、減額交渉の余地がある。
  • 不貞行為の慰謝料問題は、法的な知識が必要となるため、専門家への相談がおすすめ。
  • 悩みを抱えている場合は、一人で抱え込まずに弁護士などの専門家に相談することが解決への近道となる。
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